夢と彦摩呂の始まりを私たちは知らない:先週みたテレビ(7月27日~8月2日)

おやすみ日本 眠いいね!』(8月1日)

 

 宮藤官九郎とピースの又吉直樹をMCに擁し、

 2012年に出し抜けに始まったNHKの『おやすみ日本』。

 放送終了時間が基本的に決まっておらず、

 視聴者が押した「眠いいね」ボタンが目標数に達したときが終了時間、というこの番組も、

 不定期の生放送ながら先週1日の放送で10回目の節目を迎えた。

 

 で、この日のゲストは吹石一恵

 吹石は普段、早寝早起きなサイクルで生活しているらしいのだけれど、

 深夜の生放送である当番組出演に出演するにあたって、準備万端そなえてきたのだという。

 「私ね、この番組にそなえてね、5日ぐらい前から、5時ぐらいまで起きる練習してた」

 

 なるほど、なんだかキュートだ。

 

 他方で、30日放送の『徹子の部屋』。

 長谷川博己をお客さまに迎えたこの日の放送のなかで、

 同じ睡眠というテーマで黒柳徹子がこんなことを言っていた。

 

(お肉が)大好きですよ。少し食べ過ぎだと思うぐらいお肉食べてます。スタッフと今度お肉食べにいくとかって決めるとね、もうね、前の日ぐらいから夜寝るときね、「明日お肉だ」って思いながらね、小学生じゃないんだからと思いながらね、そう思って寝るの。*1

 

 さすがブラトップどころかノーブラな徹子。もろもろと上回るキュート。

 

『ヨルタモリ』(8月2日)

 

 睡眠といえば、2日放送の『ヨルタモリ』で、

 ゲストのリリー・フランキーが夢の始まりについて次のような話をしていた。

 

夢の終わりのことはよく覚えてるけど、その夢がどこから始まったかって覚えてないじゃないですか。でも、オレはたと気づいたのが、もしかしたら、夢に始まりめいたものなんか、オレらが想像してるものなんかはなからなくて、オレらが覚えてるところから出し抜けに始まってるんだと思う。単純に物語として夢を捉えてるから、始まりめいたものがあるはずだと思ってるんですけど、ないんですよ。*2

 

 夢に終わりはあるが、始まりはない。気づいたら始まっているのが夢だ。

 だとしたら、いつのまにか宮沢りえがママとしていて、

 タモリに似た常連さんたちがいつもツケで飲んでいて、

 毎夜訪れる芸能人と談笑して演奏するそんな湯島のバーを舞台とした番組もまた、

 出し抜けに始まった夢なのかもしれない。

 

ミュージックステーション』(7月31日)

 

 夢といえば、先週31日の『ミュージックステーション』にグループ魂が出ていて、

 「彦摩呂」という歌を披露していたのだけれど、

 この曲を作詞した宮藤官九郎が、

 「曲はあったんだけど詞がなかなか思いつかなくて、

 でもある夜にみた夢のなかでスラスラと彦摩呂に関する詞が書けて、できたのがこの曲です」

 みたいな話をしていた。

 「夢のなかのオレはやけに彦摩呂に詳しいんですよ」

 

 なるほど、夢には始まりがない。

 だからこそ、なぜこの曲に彦麻呂の詞を乗せないといけないのかとか、

 原因と結果の間に整合性をもたせる脈絡探しをクリアできるのだ。

 

 さて、『ミュージックステーション』でグループ魂が新曲「彦摩呂」を生披露。

 「海の宝石箱や~」とか「味のIT革命や~」とか「鳥類の出会い系や~」とか、

 そんな彦摩呂フレーズをふんだんに盛り込んだ、彦摩呂の宝石箱状態の曲だったのだけれど、

 そこにフレームインするかたちでご本人の登場。

 

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 これもまた、脈絡のない夢の続きだったのかもしれないのだけれど、

 さてここで、20年以上前の彦摩呂をみてみましょう。

 

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 この写真の彦摩呂と称される人物は、ひとりの人間として、

 たしかに過去から現在まで連続した存在なのだろう。

 けれど同時に、私たちがいま知る彦摩呂は、

 この写真の人物とはどこかで断絶している。

 しかし、いまの彦摩呂へと連なる履歴の始まりを私たちは知らない。

 

 彦摩呂もまた、出し抜けに始まった夢である。