『ワイドナショー』(2月5日)
石原良純「砂浜に大きなスコップをもってるだけでも、一番大きな力がある男になるんですよ」/『ワイドナショー』2/5
— 飲用 (@inyou_te) 2017年2月6日
東京都政のことはよくわからないけれど、
元・都知事の息子であるところの石原良純の趣味が「穴掘り」であることは知っている。
良純は砂浜に行き、波打ち際に大きなスコップで穴を掘ることを趣味とする。
水を含んだ砂にスコップが入っていく感触を楽しみ、
寄せる波で侵食される穴をみて愛でるのだ。
かつて「穴掘りとは?」と聞かれて良純は答えた。
「ムダな時間ですよ」
「人間はムダなものだってのが(穴掘りをしてると)よくわかるんですね」*1
もし、知らなかったならば知ってほしい。
豊洲の地下に空洞をつくるずっと前から、
あるいは豊洲の件をみんなで掘り返すずっと前から、
良純はひとり砂浜を掘り返していた。
大きなスコップをもった良純は、ひとり砂浜で穴の侵食を見つめていた。
あれほど執拗に追求された盛り土の話題も、新しい情報の波にさらわれていった。
そこには「ムダな時間」が流れていた。
だが先週、石原良純の穴掘りについて、本人の口から新たな情報が発せられた。
「砂浜に大きなスコップをもってるだけでも、一番大きな力がある男になるんですよ」
良純の穴掘りは、ただただ無為を楽しむ時間ではなく、
小さなスコップで砂遊びをする周囲の者たちよりも大きなスコップをもつことで、
己の力を確かめる時間でもあったのだ。
なるほど、「ムダな時間」をつくりだすことはしばしば、
「大きな力」の所在を確認する/させる行為と結びついている。
『カルテット』(1月31日)
「告白は子どもがすることですよ。大人は誘惑してください。誘惑はまず、人間を捨てることです」「だいたい3つパターンがあって、ネコになるか、トラになるか、雨に濡れた犬になるか」/『カルテット』
— 飲用 (@inyou_te) 2017年1月31日
だけれども、力の所在を周囲にわざわざ誇示する者は、
反撃を招く機会を与える者でもある。
大きなスコップを持つ者は、大きなスコップを奪われる者であり、
より大きなスコップを持つ者に討たれる者である。
狡猾な権力者は、そこに力があることを感じさせないだろう。
力をふるわれている者からの自発的な同意すら、ときに調達するだろう。
たとえば、自主性が含まれたおごり・おごられる関係は、
力関係ではなく、だからイジメではなく、
ましてや恐喝ではないとしばしばみなされるように。
かくして、先週のドラマ『カルテット』の、
小学校のころ自分のクラスを毎年学級崩壊に追い込んだり、
Apple Store勤めの元カレを朝からパチンコに並ぶような男にしてしまう、
学生のころのアダ名が「淀君」な元地下アイドルのセリフにあるように、
対人関係で主導権を握ろうとする大人は、
自分から「告白」するようなマネは避けようとする。
相手から「告白」させるように「誘惑」する。
そうやってウルトラソウルが輝いたりする。
みなさん、高橋一生がランジェリー姿で「誘惑」していましたよ。
『明石家電視台』MBS(1月30日)
ミッツ「(炎上したら)世間が『アレは全部売名行為だ』って。売名に決まってんじゃん。こっちはカネもらってんだから。なんだって売り物になるんだったら売るわよ」 ロザン・宇治原「タレント活動っていうのは売名のことを言いますからね」 さんま「オマエら売ってんの? オレはもろうてくれはる」
— 飲用 (@inyou_te) 2017年2月2日
先週30日の毎日放送『明石屋電視台』で、SNSでのケンカが話題になっていた。
タレント同士や、タレントと非タレントがSNSで公開のケンカをする。
それが話題になると、「炎上商法だ」「売名行為だ」と叩かれる。
けれどミッツ・マングローブやロザン・宇治原いわく、
世間に名前を売るのがタレントなのだから、そりゃ「売名に決まってんじゃん」。
なるほど、タレントの売名を「売名だ」と叩くのは、確かに筋違いかもしれない。
けれど、ここで明石家さんまが切り返す。
「オマエら売ってんの? オレはもろうてくれはる」
直後に「オレも売り歩いてた時期はあったよ」というようなフォローを入れていたし、
つまるところ瞬時の切り返しの笑いなわけだけれど、
確かに少なくともいまの明石家さんまと世間の関係は、
お金を介した売る・買うの経済関係というよりも、
あげる・もらうの関係に近いような気もする。
自発的にさんまの笑いを「もらう」ほうに動くテレビの前の人たち。
そこには何かしらの力が働いている。
もちろん恐喝のたぐいとかではなくて。
同じ番組でさんまは、タレントがしばしばSNS上で、
意図的にケンカや「炎上」を仕掛けることに対して次のようにも言っていた。
「オレはナシ。怒らすというのはナシやね。とにかくちょっとでも笑顔にしたくてこの商売選んどるからな」*2
地方のロケで地方の高齢者にカメラを向けると、
しばしば顔をそむけながら「カットしといて」と指をチョキチョキさせる。
日本の人たちは、明石家さんまのテレビの中の動きを、
自発的にもらって/いただいている。
その力のもとで生まれるのもまた「ムダな時間」かもしれない。
けれど、 同じ「ムダな時間」なら、「怒らすというのはナシ」の方がいい。