2023年1月にみたテレビ

2023年1月もたくさんテレビ番組をみました。で、視聴番組のなかでおもしろかったものはWeb連載などで書いたりしているのですが、分量的・文脈的に触れられなかった番組も多いので、これはそういった番組のなかからいくつかについて短めに触れる記事です。先月のテレビの落穂拾いです。

 

『千鳥の鬼レンチャン』1/8

サビだけカラオケチャレンジ。朋ちゃんこと華原朋美のパフォーマンスがすごかった。以前よりも30kgほど痩せたという華原。かまいたち・濱家を煽ったり、島田珠代ばりのダンスを踊ったり、おもしろのパワーもアップしていた。

この日の彼女は歌はうまいしキレイだし、globeや安室奈美恵といった小室ソングを歌ったりするところにドキュメンタリー感がありつつ(天の声=ノブコブ徳井「朋ちゃんがこの人の歌うたうんだって思いながら歌詞聞いてたら、個室で涙が出そうになった」)、でもずっとふざけてておもしろいしで、テレビという媒体で見る者をひきつけるエンタメのフックを総動員している感じ。いろんな感情の波状喚起。バラエティ番組とは本来は文字通り「さまざま」な娯楽のパッケージだけれど、それで言えばひとりバラエティだった。

 

不夜城はなぜ回る』1/9

夜中に明かりがついている施設を取材する番組。この日は、秋田でいぶりがっこを作っている家族と、24時間営業の熊本の仏壇屋が密着されていた。

で、前者では、昔は冬を生き延びるためにいぶりがっこを作っていたと語るおじいさんの映像や、冷たい水に手をさらしながら大根を洗う老夫婦の映像に、東京の居酒屋みたいなところでワインのアテにクリームチーズいぶりがっこをつまんでいる人たちの映像を繰り返しインサートして笑いを誘ったかと思うと、その後、お客さんや他の生産者、老夫婦を手伝う息子といったさまざまな人への取材映像とともに、食品衛生法の改正に伴う漬物業界の窮状や地域の過疎化といった問題にも触れていたり。後者の仏壇屋では、店主の底抜けに明るく前向きな商売人としてのキャラクターに焦点を当てつつも、その背景にあるいじめられっ子としての過去や、熊本地震での経験をふまえてコロナ禍や被災者に仏壇を無償提供する活動をする姿に触れるなど、1人の人を深掘りする人物ドキュメンタリーになっていたりした。

毎回、最初の交渉のところまでは同じだけど、そこから先のVTRの形式は取材対象によって結構ちがう。撮れたものに合わせてる、みたいなことなのだろうか。いろいろ試してるのだろうか。いずれにしても自由。いい。

 

水曜日のダウンタウン』1/11

身代わり数珠つなぎカラオケ。山奥のカラオケBOXに軟禁された芸人が、自分より歌がうまそうな身代わりをそこにおびき出し、その人が自分のカラオケの得点を上回ると脱出できるという企画。数々の芸人に断られるなかライス・関町を収監8時間半でようやくおびき出したものの、関町が『全力少年』を歌いだしたら思いのほかヘタで一気に絶望の表情に変わるコロチキのナダルの顔がよかった。あの表情は辞書の「絶望」の項目の挿絵にしてもいいと思う。

 

『レギュラー番組への道』1/14

チャレンジ企画が放送されるNHK総合の番組『レギュラー番組への道』。この日は歌手が母校の音楽室でライブをする「おかえり音楽室」という企画が放送されていて、出演していたアーティストはAwichだった。

出身地である沖縄の母校(高校)でパフォーマンスをするAwich。その語りと歌には、彼女の半生、基地問題をはじめとした沖縄の置かれた社会的・政治的状況などがオーバーラップする。人生に重なる社会、社会に重なる人生。そのあいだで発される言葉。音に分散する意味、意味に分散する音。音楽に疎い僕は彼女の歌声を聞いたのはこれが初めてだったのだけれど、とても胸を撃たれた。

 

水曜日のダウンタウン』1/17

愛煙家対抗 負け残りタバコ我慢対決。文字通り、タバコ好きを集めて簡単なゲームをさせ勝ったものから喫煙&帰宅できる、という企画だ。愛煙家にとってはキツい状況なのだろう。彼ら彼女らが集められた体育館は阿鼻叫喚の様相を呈する。で、そこにトム・ブラウンのみちおも出ていたのだけれど、その顔がとてもよかった。あの表情は「テレビのバラエティで映せるギリギリの顔」の基準にしてもいいと思う。

 

『有吉クイズ』1/17

食リポのテクニック解説みたいな番組はいろいろ見てきたけれど、今回の『有吉クイズ』ではホンジャマカ・石塚のちょっとあまり見たことないタイプの食リポテクニック解説をやっていた。

たとえばたこ焼き。熱々なやつを頬張って食べるみたいなのが「よくある食リポ」のイメージだけれど、猫舌でもあるという石塚はしっかり冷ましちゃう。そして、そんな冷ましてるとこの映像が使われないように真顔になる。石塚の真顔は怖い。冷めたら再びニコニコ笑顔になって実食。で、まいうー。

実際のロケで石塚がそういうことをしてるのかはもちろんわからないけれど、さすがこれまでも有吉の完全黙食とか『孤独のグルメ』風とか放送してきた『有吉クイズ』。食リポ企画の宝石箱ないしIT革命や。

 

『あちこちオードリー』1月18日

伊集院光が語る。亡くなった師匠に以前言われたこと。「自分が時間を忘れてやってしまうような好きなことに、少しの社会性をもたせれば、この商売は食っていける」。儲けや人気のためではなくなぜか時間を忘れるぐらい夢中になってしまうことについて、「わかる人にはわかる」というような態度ではなく、その魅力を社会に向けてわかりやすく伝えることができるようになれば、それだけで仕事として成り立つ。誰もやっていない隙間を探して戦略的に「好き」をやるのは違う。本当に好きでもないのにやるな。

なるほど、なんだか汎用性がありそうな話である。好き+社会性。そこでいう社会性は、好きを自分のなかで守るための社会性でもあるのだろうなと思ったりもする。好きを摩耗させてしまう社会性ではなく。バランスはとても難しいとは思うけど。「食っていくためには社会性を帯びさせなければならない」みたいに転じると本末転倒なのだろうし。自分が「好き+社会性」を大事にするがゆえに他人の仕事を評価する際の基準としてもそれがせり上がってくると、それはもう気をつけないといけない気もするし(自分とどんな関係にある他人かにもよるだろうけど)。

なにより芸能の世界の話を社会一般に敷衍しすぎるのも、それはそれでやり過ぎるとよくないのだろうけれど。

 

『午前0時の森(火曜)』1/24

精神科医名越康文を招いてカウンセリング的なもの。それを受けるなかでアナウンサーの水卜麻美が子どものころから自身が抱える対人関係上の葛藤を語ったりして、なんだか水卜麻美大解剖スペシャル、みたいになっていた。

名越は若林についても分析的に語っていたのだけれど、半身で話を聞いているような若林(名越いわく「ここにいてここにいない」)と、パワーの強い水卜(名越いわく「気質的に一番しか狙わない人」)の関係は抜群だという。いろんな番組のいろんなバディで同じような診断的なものを見たい。

 

ダウンタウンDX』1/26

結婚した山本圭一西野未姫が2人で出演。年明け以降の夫妻のテレビの出方を見ていると、ときどき見聞きする「結婚は男性にとってはイベント、女性にとっては生まれ変わり」みたいな見立てを思い出してしまう。

 

『ワタシってサバサバしてるから』1/9~

朝ドラがすぐにたくさんの批判に囲まれちゃうなかにあって、番組側から「これはもうそういうドラマですよ」とばかりに(少なくともいまのところは)ガンガン煽っていく夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』。おもしろくて見てる。原作は未読。

”逆に刺さる”言葉とかが少しずつ出てきてる感じもあるし、最初から「こんな網浜奈美を皆さんが好きになるまであと○○日」なわけだけれど、このままずっと”不快”で終わってほしい感じも少しある。主演の丸山礼がいい。

 

Web連載で触れた番組

井桁弘恵のブランディング、千鳥大悟とヤギと子ども…飲用てれびのテレビ事始め2023|日刊サイゾー

・『新春!爆笑ヒットパレード』1/1 ダイアン・津田

・『ロケバナシGP』1/1 井桁弘恵

・『千原ジュニアの座王』1/2 アルピー・平子とすゑ・三島の決勝

・『あたらしいテレビ2023』1/1 テレビ製作者座談会

・『ここにタイトルを入力』1/3 すっぴん女の赤裸々ナイト

・『サンドウィッチマン芦田愛菜の博士ちゃん』1/3 古代エジプト博士ちゃん

・『ヤギと大悟』1/2 ポポと園児と千鳥の大悟

・『芸人シンパイニュース』1/2 M-1ファイナリスト密着

・『ラヴィット!』1/4 オープニング2時間

 

『ぽかぽか』の『いいとも』っぽさ、お笑い生態系への影響は|日刊サイゾー

・『マルコポロリ!』1/8 M-1戦士ちょっとだけ大集合SP(ウエストランド

・『ぽかぽか』1/9~13

 

『ブラッシュアップライフ』安藤サクラの「人生何周もしてる人あるある」と倫理観|日刊サイゾー

・『秋山と映画』1/18、『ラヴィット!』1/18、『千鳥のクセがスゴいネタGP』1/19 ロバート・秋山

・『ブラッシュアップライフ』1/15

 

ダイアン津田篤宏、水ダウ「名探偵ドッキリ」のジャッジと正解|日刊サイゾー

・『水曜日のダウンタウン』1/25 犯人を見つけるまでミステリードラマの世界から抜け出せないドッキリめちゃしんどい説(ダイアン・津田)

・『ボクらの時代』1/22 ファーストサマーウイカ