高い系をデトックスする:先週みたテレビ(3月5日~11日)

YOUがデトックスするもの

 いわゆる「意識が高い」話題をストレートに受け取るのは抵抗がある。けれど、意識の高さを揶揄する方向に意識が高いことにも違和感があったりする。でもやっぱり、意識が高い話題には抵抗がある。

 生き生きとした仕事だったり生き方だったり、そういう意識が高い話題を扱う番組ではしばしば、そんな人(意識の高さにも敢えての低さにも違和感を覚える人)をも武装解除させるタレントが起用される。たとえば、YOUとか。

 ちょっと斜めな角度からの批評眼。それに加えて、映画監督の是枝裕和も「年下なんだけど、センスのいいお姉さん」と評する、センスの良さ、のようなもの*1。あるいは、『ねほりんぱほりん』でモグラのぬいぐるみの姿を借りて時折みせる、良識的かつ現代的な道徳観、のようなもの。

 意識の高い話題はそのようなYOUにより、斜めからのツッコミが入って一旦脱臼されるとともに、意識の高さが本来まとっていてよいはずのセンスの良さも補填され、さらに道徳的な後見も備えることになる。情報は受け取りやすい組成にデトックスされ、意識の高いものをめぐる違和感をこじらせている人も含む、幅広い視聴者にお届けされる。

 

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 そんなYOUが出ている『セブンルール』。同番組は若い女性の仕事での活躍を追う。公式ホームページには次のようにある。「テレビに出ることはなかなかないけれど、様々な分野で、そのキャリアを輝かせている女性が主人公」「自分が課す”ルール=いつもしていること”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ…など、人生観そのものを映し出す新感覚ドキュメント」*2。意識の高さを嗅ぎ取る向きもあるだろうが、個人的には毎週楽しくみている。

 『セブンルール』のMCは4人。オードリー・若林、役者の青木崇高、作家の本谷有希子、そしてYOU。ある回のエンディングトークでは、若林の問いかけに端を発し、この番組は女性にどんな風にみられているんだろう、という話を4人でしていた。

 YOUは言う。「アタシは本当に客観的に、偉いなぁとか、素敵だなぁって思いながら、あ、クズでよかったなって思う方が多いかな」。ここでまず、デトックス

 さらに、本谷有希子が言う。「私も基本的に輝いている人をあんまりみたくない」「自分ならみないものをいま、(MCとして)みせていただいてるなっていう感じ」*3

 自分からはこのような番組はみない、という話で番組は終わった。YOUはもちろんなのだが、YOUどころではなかった。番組をあげて超デトックスである。

 

 さらに、オードリー・若林の交際報道以降、同番組には新しい要素も加わった。

 たとえば、先週6日の放送。口を笑顔の形にすれば、自然に楽しくなってくる、というような話から、YOUは若林を「ずっと前より全然笑顔増えましたよね、やっぱり。彼女云々の前から」とイジる。あるいは、以前の放送では、次のようなやりとりも。かように、最近の『セブンルール』では、恋愛による若林の恋愛による変化をYOUが解説する、という流れがひとつのコンテンツを形成している。

 

若林「(1年のうち楽しい日なんて)20代なんて100日ないぐらいじゃないですか。全部楽しくないですからね」

YOU「すごいんですね、彼女の力って」*4

 

若林「新聞で『熱愛』って出るんですよ、完全に。そのときに、あ、オレいま熱愛してんだ、って思いますよ。普通じゃないですか、しゃべったりしたり出かけたりするのって」

YOU「でもいま、もうただのノロケになっちゃってますよ」*5

 

 2018年になってからの『セブンルール』は、YOUをひとつの起点としながら、若い女性の仕事での活躍と中年男性の恋愛を追う、そういう番組になっている。

 

黒柳徹子デトックスするもの

 6日放送の『徹子の部屋』のゲストは美輪明宏だった。2人が並ぶと「ヴェニスの仮面舞踏会みたいね」と美輪がいう2ショットでのトークがお送りされた。

 

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 徹子を前に美輪は言う。「一番人間で難しいのはね、喜怒哀楽すべての感情を理性でコントロールできること」「感情を全部どけて、ロボットみたいにクールになって、問題を解決する方法だけを考えるようにする。そうすると悩んだり苦しんだり溜息ついたり、無駄な作業をしなくてすむわけですよ」。

 理性による感情のコントロールのために、美輪は人生をかけて修行をしているそうだ。修行の方法は次のとおり。

 

美輪「首をまっすぐにして背筋をちゃんとして、頭を天に近い方にもっていって。瞑想してるお坊さんみたいに。そして鼻からゆっくり息を吸って、吐いて。体のあちこちの力が入ってるところを探してすーっと力を抜いていって。そして、ゆったりと、おおらかに、清らかに、というふうに自己暗示をずーっとかけてやっていくと。で、我は菩薩である、我は菩薩である、っていう風に言ってると、だんだんだんだん、清浄化してくるんじゃないですかね」*6

 

 美輪はいつものしっとりとしたトーンで、菩薩ゾーンに入る修行の話を開陳した。

 そのような美輪の話に黒柳はどう反応したか。徹子は笑っていた。「我は菩薩である」のあたりで笑ってしまい、「やってみます(笑)」と言っていた。そして、ロボットであるところのtottoではない方のトットちゃんは、感情を理性でコントロールする云々の話については、「(私には)そういう気がない」と言うのだった。「だって嬉しかったら笑うし、悲しかったらやっぱり悲しいなって思うじゃない」*7

 

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 「意識高い系」の話題には、YOUがいた。

 「霊感強い系」の話題には、徹子がいてほしい。