2023年2月にみたテレビ

2023年2月もたくさんテレビ番組をみました。で、おもしろかった番組はWeb連載で書いたりしているのですが、分量的・文脈的に触れられなかったものも多いので、これはそういった番組のなかからいくつかについて短めに触れる記事です。先月みたテレビの落穂拾いです。

 

『大奥』2/7

堀田真由と福士蒼汰徳川家光×万里小路有編、とてもよかった。しばらく堀田の出演作を追ってみたくなった。それに続く仲里依紗山本耕史徳川綱吉×右衛門佐編も、もちろんよかった。山本が儒学の講義をしてる部屋に仲里依紗が入ってくるところ、映画『ジュラシックパーク』で肉食の恐竜が調理室に入ってくるシーンみたいだった。

 

『ぽかぽか』2/8

トークコーナーに伊藤沙莉。バラエティ番組にもよく出ていたりする彼女だけれど、以前はうまくできずに悩むこともあったらしい。そんなとき、兄のオズワルド・伊藤からこうアドバイスされたという。

「(バラエティに出ると)前は反省することがすごく多くて。全然盛り上がってなかった気がするとか、貢献できてなかった気がするみたいなので、もうみんなから嫌われたんだみたいな感じに。そしたら1回、お兄ちゃんが『芸人さんがその場にいたの?』みたいな。『それで盛り上がんなかったら芸人さんのせいだから大丈夫だよ』みたいに言われて。『君は芸人さんじゃないから、おもしろいことをするっていうよりは、人間を出す場だと思っていいよ』みたいな。そっからバラエティがあんまり緊張しなくなりました」

消極的なスタンスでバラエティに番宣で出る俳優が芸人から揶揄される、みたいなのは繰り返し見てきた。それが影響しているのかいないのか、今ではバラエティに積極的なスタンスを見せる俳優が多い。

そんななかで、カメラの外での会話とはいえ、そして兄から妹への助言とはいえ、芸人のこんな言葉を聞いたのは、私はあまり記憶がない。みんながみんなテレビでおもしろいことをする必要はない、と改めて思う。

その上で、俳優は人間を出すべし、それをおもしろくするのは芸人にまかせるべしみたいなトークを聞いたあとに「すごい緊張してきちゃったな……」と穏やかにオチをつけるハライチ・澤部がおもしろかった。

 

『まんが未知』2/8・15

宮下草薙・宮下とその弟の漫画家デビューの道のりを追う企画。3話集中連載の枠を勝ち取った宮下兄弟が、藤田和日郎を再度たずねてアドバイスをもらう。で、今回も技術から心構えまでさまざまな助言があったのだけれど、その言葉がどれも響く。漫画家じゃないのに響く。ひとつだけ引用すると、こんな感じ。

「(作品を世の中に)出したからには(批判は)言われますわ。SNSとかね。特にテレビのこういうような番組でみられてるわけだから、作品に対して言いたいやつもいっぱいいる。けど、それみんなね、スルーして。作家さんに対する耳あたりのいい言葉は、どんな意見も聞くんだよ。読者さんは素人なんだから『素人の感想も聞くべきだよ』っていうふうに言ってるけど、聞かんでいいよ。一番最初にロケットで打ち上がっていく2人なの。ロケットが打ち上がっていくときに、鎖がいっぱいそれに絡みつくのよ。だけどいちいち反応して、それを一つひとつ反省材料にしようねとかそんなことよりも、今は星を見ようぜ。自分の好きな漫画家さんたちに並ぼうと思って飛んでいくんだから、地面に縛り付けるそれは全部断ち切って、向こうに向かって上がっていこうぜっていうこと。その燃料投下はいい意見さ。燃料のポンプがロケットについてて、いい意見もくる。それは燃料にして打ち上がっていかないといけないから。マイナスの意見は全部無視。無視していい。無視しなきゃいけない」

感情的なものは論理的じゃない、論理的に語るには感情を排さないといけない、みたいな向きもあるけれど、藤田の語りの上では両立している。情の乗った理、理に貫かれた情。漫画家ではない僕にも藤田の言葉がなんだか響いてしまうのは、情と理、どちらにも切り詰められない総体としての人間と格闘し、描き抜いてきた時間をそこに感じるからだろう。

 

『金曜日のスマイルたちへ』2/10

山田邦子の特集。過去の番組の映像がたくさん出てきておもしろかった。で、たいていこういう振り返り企画は、どこかで過去映像として見たことのあるVTRが流れたりするものだけれど、今回はそのほとんどが、私は見たことがない/見た記憶のないものばかりだった。このかん、山田邦子はテレビでほとんど振り返られていなかったのだなと改めて感じた。

 

『人志松本の酒のツマミになる話』2/10

ウエストランド・河本が泥酔。彼は酒を飲んだらヤバいからという理由で、スタジオとは別室で飲んでいたらしいのだけれど、確かにその挙動はちょっとヤバさを感じさせるもの。TVerでは、じゃれながらスタッフにパンチを入れる映像とかも収められていた。それにしても、コンビの「目立たないほう」に焦点があたるのがだいぶ早くなってる気がする。

 

『ぽかぽか』2/13

主婦からの悩みに答える相談コーナー。もちろん、みのもんた的にガチで答えるのではなく、悩み相談の形をとった大喜利大会。回答者はスザンヌ紺野ぶるま、たんぽぽ・白鳥のほか、ハライチ・岩井と神田愛花。神田の大喜利がぶっ飛んでおり、もう大喜利なのかよくわからない。そんな神田の回答に対するハライチ・澤部のあしらいがバラエティに富んでおり、もうある種の大喜利である。

 

『キョコロヒー』2/20・27

齊藤京子が以前トークのなかで見せていた「後ろの感じ悪いギャルの小芝居」が妙にうまかったので、嫌なギャル役の需要を独占できるよう今から練習しておこう、という理由で、練習する流れに。で、齊藤の演技の一味ちがうクオリティに「うわぁ~、だりぃ~」とヒコロヒー。「これで学園モノ出たい」と齊藤。

その翌週の放送、雑誌などの撮影の現場に被写体の気分をアゲるみたいな意味合いで「かわい~」「すご~い」などと盛り上げる人たちがいるけど、あれ誰がやってほしいって言い続けてるの?みたいな話になったときに、齊藤が「バブみがふか~い」「そのチュンとした口なに~」などとやはり”小芝居”を見せていて、それも絶妙だった。

 

『火曜NEXT!』2/21・28

Shaddowという企画を2週にわたって放送。ある人がロケを撮った後で別の人がまったく異なる脚本を作成、それに沿ってロケをしていた人がVTRにアフレコし直す、というもの。アニメや映画などの映像にまったく違うセリフをあてる大喜利があるけど、あれのロングバージョンみたいな感じ。

1週目はゆきぽよのロケに錦鯉・渡辺と滝沢カレンが脚本を書いていた。渡辺のそれは、なるほどかつてボケだった片鱗を感じさせる。滝沢のそれは、もう『脱力タイムズ』の美食遺産。

2週目は、もう中学生とランジャタイ・国崎のロケに、同様にカレンと渡辺が脚本。もとのロケがそもそも不条理だから、もう正解に不正解を重ねているのか、不正解に不正解を重ねているのか、正解に正解を重ねているのかよくわからない状態。ハチャメチャでおもしろかった。

それにしても、この企画は出演者がロケ時にマスクをつけていることを前提としたもの。今後、こういうのはテレビの中でもう逆に不自然になっていくんだろうか。VTRを見ていたバカリズムは第2弾を切望していたけれど、世間の推移によっては、マスクを使った最後の実験的番組になるのかもしれない。

 

平野レミの早わざレシピ』2/23

祝日恒例の平野レミの料理番組(生放送)に、北川景子がゲストとして出演していた。番組冒頭、「レミパンも使わせていただいてます」と北川。それにレミが「NHKレミパンなんて言っちゃってるよ」と反応する。その後も、「レミパンミニとワイドも使ってます」「(柄の部分に専用のお玉などが)くっつくんですよね」「蓋が立つんですよね」などとレミパン情報をお届けする北川だった。

NHKでは商品名を言ってはいけない、みたいなルールがあるとされる。実際どうなってるのか私は知らないけれど、とにかく今回はそんなルールに抵触している様子がおもしろとして流れていて、レミも「私なんも言ってないからね」などと”放送事故”を演出しながら盛り上げていた。SNSで「北川景子」がトレンドワードになったり、この一件がネットニュースになったりしたようだ。

しかし、である。平野レミが出る番組には必ずレミパンが出てくる。もちろんNHKでは「レミパン」という名前こそ基本は出てこない。が、料理中、さまざまなものを派手に散らかすレミは、レミパンの扱いだけは丁寧で、柄のところにお玉をしっかりくっつけてみせたり蓋をちゃんと立ててみせたりしてレミパンをただの調理器具ではなく商品としてアピールしてきた。もう「レミパン」の名前を出そうが何だろうが今さらなのだ。

レミリテラシーの啓発をもっとがんばらなくては。そう決意を新たにした。

 

『有吉ダマせたら10万円』2/25

有吉をダマす側としてGACKTが出演。一緒にKも出演。最近、GACKTをテレビでみるときはいつも横にKがいる気がする。なんだかそのテレビの出方、演歌歌手とその弟子みたい。いや、もちろんKのキャリアは駆け出し中の弟子みたいなものではないのだけれど、弟子が基本的に尊敬のスタンスを保ちつつ、同時に師匠をちょっとイジる、そうやって師匠の懐の深さや可愛げを画面上で印象づける感じが重なる。

 

『ブラッシュアップライフ』2/26

なっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)が人生1回目で終わってるっぽいのは、やっぱりあの窓口が申請主義に則ってるからだろうか。

 

『ボクらの時代』2/26

橋本環奈がこんな話をしていた。

「媒体とかで言ってない話。私、スカウトって全員がされるものだと(子どものころは)思ってて。街を歩いたらスカウトされるものだと思って生きてきてて。ホントに月1ぐらいで声かけられたりしてたんですよ、福岡にいたとき。これ、めちゃくちゃ嫌味になるなと思って言ってこなかったんですよ」

すごい話だ。そしてたぶん、こういうことを言っても嫌味にならないレベルの人しかそもそもこういう経験をしないのだろうから最初から嫌味にはならない。

 

Web連載で触れた番組

アンガールズ田中卓志の自分の「なか」じゃなくて「まわり」を掘れ|日刊サイゾー

・『千鳥の鬼レンチャン』1/29 大縄跳び

・『ゴッドタン』2/4 勝手にお悩み先生(アンガールズ・田中)

 

『ラヴィット!』オードリー春日を見たときの“多幸感”の正体|日刊サイゾー

・『あちこちオードリー』2/8 ダウ90000・蓮見

・『ラヴィット!』2/8・2/9 オードリー・春日

 

コットン西村が終止符を打つ、芸人界の陰陽合戦|日刊サイゾー

・『不夜城はなぜ回る』2/13 バイきんぐ・小峠

・『あちこちオードリー』2/15 コットン・西村

 

狩野英孝の「野生の勘」とテレビの「成立」|日刊サイゾー

・『水曜日のダウンタウン』2/22 アイマスク着脱チャレンジ

・『有吉クイズ』2/21 狩野英孝