2023年6月にみたテレビ

2023年5月はいつもの月よりテレビがみられなかったのですが、それでも結構みました。で、おもしろかった番組については日刊サイゾーの連載で書いたりしているのですが、触れられなかったものも多いので、これはそういった番組のなかからいくつかについて短めに触れる記事です。先月みたテレビの落穂拾いです。

 

チョコプランナー』6/5

鬼滅の刃』を通ってこなかった人サミット。芸人は世間的に流行している漫画やアニメ、映画や配信などさまざまなエンタメを積極的に見ないといけないこともある、といった話の流れで、ニューヨーク・屋敷が、漫画を読むことを「勉強」という人が嫌いだ、というようなことを言っていた。

たしかに、仕事の一貫だと自分のなかで割り切ってやるのはいいとして、それを「勉強」と言ってしまうかどうかはその人のエンタメへの向き合い方を表現してしまう気がする。ある意味でやせ我慢だけれど、それを「勉強」と言ってしまうかどうか。個人的には、録画したテレビ番組を見ることを「消化」と言いたくないみたいなところがある。

 

屋敷「若手のツッコミやったら『鬼滅』知ってないとヤバいよみたいな雰囲気、あるじゃないですか。あそこで俺が屈したら、売れるためにがむしゃらなツッコミみたいになってまうと思って。勉強って言うやつ嫌なんですよ、漫画読むことを」

 

『ぽかぽか』6/6

トークコーナーのゲストに徳光和夫ミッツ・マングローブ。麻雀のことを「ギャンブル」と何度も(確信犯的に)言う徳光に「麻雀はギャンブルじゃありませんからね。麻雀はゲームですから」(岩井)などとフォローするハライチがおもしろかった。
 
徳光「サラリーマンになってからずっと(ギャンブルは)やってましたし。小学校6年生のときに無理やり麻雀を覚えさせられましたから」
岩井「麻雀はね、ギャンブルじゃありませんからね。麻雀はゲームですから」
徳光「麻雀はゲーム? 立てばパチンコ、座れば麻雀、歩く姿は馬券買いってよく……」 
澤部「そういう夢を見てたんですね」

 

『有吉クイズ』6/6

ぼる塾・あんりが大好きなのだろう長州力がロケ中に終始ごきげんでおもしろかった。今まであんりがこの文脈でテレビに出ていたことはなかったんじゃなかろうか。先日(7/12)の『あちこちオードリー』でのあんりの話とも重なるけれど、田辺さんの「スイーツ女王」としての仕事がぼる塾の安定した基盤になったことで、あんりが別の面を出しても大丈夫、みたいなところがあるのかもしれない。

 

イワクラと吉住の番組』6/6

Aマッソ・加納を迎えてトーク。加納の言葉がいろいろ印象的だった。

 

加納「紙飛行機みたいなもんでさ。そのままやったら落ちんねんなと思うやん。自分がそのままやったら。安泰はなくて。ずっと風というか、なんか自分で吹かさないと、まっすぐも行かれへんねんなっていうのは感じるよね」

 

加納「テレビ出るようになって、テレビあんまりみてなかったんやって気づいてんやん。お笑い番組しかみてなかったなって。当たり前のように芸人以外の人がいて、芸人なんかに興味ない人がみてるっていう世界が当たり前のところにきたときに、あ、ホンマにみんな動物好きなんや、とか。ホンマにクイズ番組って最高なんや、とか。本気でつくってるから。っていうのをみたときに、自分らしい笑いみたいなのが、結構どうでもよくなってきて、逆に。ドッキリとかもあるけどさ、全力でコケてる人を全力で笑うなんて思ってなかった、みたいな自分に気づいて。別に、自分がいままで自分の笑いとかって言ってたのって、どうでもいいかもなって思って。自分が笑ったものをどんどんネタに取り入れていこうっていう感じになってきた。だから、昔からのファンの人とかは、いまAマッソどういう状態?って思ってきてるやろうなと思う。輪郭がぼやけてきたというか。それをいまのところは良しとしてるターン、って感じ。それでいいねんって開き直ってるわけじゃないねんけど、1回良しとしてやってみるわっていう感じで。だから、ネタとかも変わったなって思われてるかなという気はする」

 

吉住「ネタを大事にしてるんだ芸人さんは、って理解してるスタッフさんが増えたのかなって。今までだったら、自己紹介がてらネタやってよ、みたいなイメージだったんですよ。そうじゃないっていうか。いろいろ語る芸人さん増えたし、みたいな感じで、スタッフさんがネタはネタってリスペクトというか。だから時代が変わったのかなって思いながら」

イワクラ「すごくいい時代になってますよね」

加納「でもさ、これさ、好感度狙いに行くわけじゃないけど、スタッフさんからしたらさ、言えるとこあるん芸人セコいなっていう気もすんねんな。お互いさ、スタッフさんは番組つくってる、こっちは出るっていうのでさ、番組つくってんのに、もしスタッフにムカつくことがあったらYouTubeとかでしゃべられるのってたまったもんじゃないなって。その対等じゃない感じ、私はちょっと気持ち悪いなと思ってんねん。何言われるかわからん時代やから、めっちゃ気……[フロアのスタッフを見ながら]つかってます?」

 

『ボクらの時代』6/11

錦鯉・長谷川×とにかく明るい安村×なかやまきんに君の3人でトーク。話をしている途中に3人が目配せをしながら黙って、沈黙のままカメラを見つめる、みたいな流れが3回ぐらいあって、なんだかおもしろかった。

 

『キョコロヒー』6/12

黒柳徹子をゲストに迎えた特番を前に、徹子の予習をする回。齊藤京子が台本の内容を忘れて自由に話し始めようとするものの、思い出して軌道修正を図ろうとする場面でのヒコロヒーとのやり取りがよかった。

 

スタッフ「齊藤さんは(徹子さんに聞きたいこと)あります?」

齊藤京子「えー、徹子さんにですよね? ムズっ……あ、いっぱいあります」

ヒコロヒー「どっち?」

齊藤「いっぱいあるんですよ。で、いろいろ調べてきました」

[顔を見合わせる2人]

ヒコ「……打ち合わせの内容を今思い出したんやな」

 

『上田と女が吠える夜』6/14

小倉優子が出ていて、若いころはプライベートでも「こりん星」の設定で周囲と接することがあった、と話していた。小倉のキャラクター管理の徹底ぶりを印象づけるエピソードである。
にしても、こりん星が「爆発」を迎えてから10年以上は経つけれど、小倉のこりん星トークは絶えていない。星自体は爆発していても、地球上ではまだ観測され続けている。こりん星は何光年先にあったのだろうか。
あと「アイドルが売れようと思って無理なキャラをつくるとあとあと大変」みたいなことがよくネタにされたりするけれど、小倉の芸能生活を見ていると全然「大変」なことになっている感じがしない(私生活はよく知らない)。「無理なキャラつくってました」でまだまだトークをしている。そうすることで他の「無理なキャラをつくっていたアイドル」を栄養にしながら自身はそれをおもしろく話す側の人として浮上していく感じがある。テレビのなかの「あるある」を話しながら、「あるある」を作り、「あるある」を生きる人になっている感じがある。自分で自分の両足の靴紐を持ち上げて宙に浮くみたいなことをやっている。すごいと思う。
 
小倉優子「本番で『私こりん星から来ました』とか言ってるのに、プライベートで『こりん星なんかないから』なんて言ったらダメじゃないですか」
上田晋也「ダメっていうか、みんなわかってるしね」

 

『大キョコロヒー』6/17

黒柳徹子天海祐希をゲストに迎えてトーク。徹子が動物と会話する話はおもしろい。

 

清水ミチコの家で猫と会話した。

黒柳「『長くなってごめんなさいね』って言ったら『ニャ―』って言うから。『私はもう失礼しますよこれで』『ニャ―』『また今度来ますね』『ニャー、ニャー』」「『ごめんなさいね、お昼も晩ごはんも食べちゃって』なんて言って話してた」

ヒコロヒー「『晩もご飯食べちゃって』って言ったら、猫はなんておっしゃってたんですか?」

黒柳「『ニャー』とかって言ってましたよ」

ヒコ「違うんですよ。さっきから、翻訳された言葉を聞きたいんですよ」

 

黒柳「競馬場みたいなところに行ったんですよ。そしたら、そこに裸馬みたいなのを連れた男の子が歩いてきたんで、ちょっとあの馬乗ってみようかなとおもって、『乗せてくれる?』って言ったら『いいよ』って乗せてくれたんですよ。鞍も何もついてない毛布がついてるだけみたいなね。で、乗ったんですよ馬に。そしたらね、馬が墓シャボシャボシャって歩いて湖のなかに入っていったから、お水でも飲むのかなと思ってたら、ジャボジャボどんどん入ってくのよ。どうすんのかなと思って見てたら、そのうちに泳ぎだしたんですよ、馬が。ガバガバすごい音がすんの。湖ってすごく広くって、なんにも手がかりがないわけ。見たらば、私が話してた友だちと男の子は向こうの方にいるわけ。小さく見えて。それでも馬はね、ガバガバガバガバ。それで私はしょうがなくてね、これは馬に頼むしかないと思って。『ねぇねぇ、すいませんすいません』って言ってね、『黙って乗ったのがあなた気に入らないのかも知れませんけど、私すぐ降りますから、あなたが回って帰ってくれたらすぐ降りますから、すいませんちょっと降ろしてください』って言ったんですよ。そしたらね、びっくりしましたね。馬がガバガバ泳いでたのが、耳をピッと立てたと思ったら、Uターンして帰ってきたんです。やっぱり馬はね、馬の耳に念仏とか言いますけど、聞けばちゃんと話してくれます。あとで聞いたのは『乗せていただいていいですか?』と言わずに乗ったのがいけなかったんだって」 

ヒコ「あとで聞いてって、誰に聞いたんですか?」

黒柳「いや、自分で考えて」

 

『刺さルール』6/20

トム・ブラウンのみちおとランジャタイの伊藤のロケ。そのロケのVTRを見ながら心理カウンセラーとか心理の専門家が、みちおや伊藤のパーソナリティをあれこれ解釈する。みちおの行動を見て「従属の関係で上に立ちたいって方。コントロール欲求とか支配欲が強いっていう表れ」と解釈する心理の専門家に対し、爆笑問題の太田が「あなたはどうなんですか?」と問い返していて、実際は他者をコントロールし従属させる側に立ちつつその事実を「科学」や「客観性」の名のもとで消していく学問的な装いのうさん臭さを指摘しているようでとてもよかった。

 

『ケーキのかわり』6/24

ごきげんなVTRをケーキを食べる代わりにみる番組。番組名からは推測しづらいけれど『トリビアの泉』の「トリビアの種」のコーナーが近いのだろうか。ハッカーが『ネプリーグ』のファイブボンバーの爆弾を止めたり、プロのジャズ奏者が作業中の工事現場の音とセッションしたり、ワニと暮らす部族の人たちがワニワニパニックをしたり、そういう実験系・検証系のVTRを見る番組でおもしろかった。

MCは霜降り明星、ゲストに小池栄子、進行はなぜか小西真奈美。いまだになぜ小西真奈美だったのか考える。ウソ。いまだに考えたりはしない。けれど、また放送されたり、レギュラー放送がはじまったりしたら、そしてそのときもまた進行が小西だったら、毎回「なぜ小西真奈美なんだろう」と考えるだろう。番組が最終回を迎えたあとも「いまだになぜ小西真奈美だったか考える」とウソをつきたくなるだろう。なぜ小西なのか絶対に説明してほしくない。

 

『だが、情熱はある』6/25

最終回。全編面白かった。主役2人のまるで本人が憑依しているかのような演技も話題だったけれど、髙橋海人が演じる若林がもう最初からびっくりするぐらい若林で、森本慎太郎が演じる山里は回を重ねるごとに少しずつ私たちの知る山里になっているように感じて、それが「足りない」という点では似ている2人の芸人としての気質の違いを反映しているようで、なんだか勝手に納得した。

 

『るてんのんてる』6/30

病院がない島のフリーランス看護師に密着するドキュメンタリー。というところからはじまって、実はそれはフェイクドキュメンタリーでした、という流れ。よくあるパターンだけれど、ちょっと違うのは、フリーランス看護師に扮していたのは子どものころに看護師になりたい夢があった女性だった、というもの。実際には子だくさんの一般家庭で子どもを育てつつ働く母親で、番組内では街頭インタビューをして見つけた人という説明だった。

近年「ふつうの人」の必ずしもドラマチックではない生活とか人生とかにフォーカスをあてる流れがある。岸政彦『東京の生活史』とか。そういう流れを、ドラマチックを求めるテレビ番組にいかに落とし込むか。そういうチャレンジとして見た。いや、そういう意図があって製作されたものかどうかは知らないけれど、私はそういう見立てで見た。おもしろかった。

 

『金曜日のスマイルたちへ』6/30

島崎和歌子を特集。島崎をはじめ、松本明子とか井森美幸とかはもう女性のタレントというより女性のピン芸人といった評価が正確なのだろうという気もするけれど、そんな彼女たちにフォーカスをあてる番組が増えているように思う。

で、島崎といえば『オールスター感謝祭』である。今回はそんな『感謝祭』の島崎の裏側に密着していた。分厚い台本を読み込む島崎とか、スタッフや出演者を気づかう島崎とか。今田耕司が「感謝祭は島崎和歌子の番組」とたびたび言っているけれど、その言葉のなるほど感が増した。

 

島崎「『感謝祭』の裏側に入ったのが『金スマ』さんが初めてなので。今まで、言葉がちょっとアレですけど、入らせなかったんですよね。見せたくないっていうか。こういう形で裏側を見せれて嬉しいなと思います」

 

Web記事で触れた人・番組

キンタロー。圧巻の「顔芸」と「お笑い批評」批評っぽいもの|日刊サイゾー

・『ランジャタイのがんばれ地上波』5/23 5/30 キンタロー。

 

バカリズムの脚本作品が持つ「あれって一番楽しかった」時間への郷愁|日刊サイゾー

・『イワクラと吉住の番組』5/30 吉住、Aマッソ・加納

・『アンタウォッチマン』5/30 6/6 バカリズム

・『ラヴィット!』6/6 柳沢慎吾

 

ヤバすぎて放送休止? テレ東『SIX HACK』とテレビの中の“陰謀論”|日刊サイゾー

・『あちこちオードリー』6/14 堀内健

・『全力!脱力タイムズ』6/16 

・『SIX HACK』

 

『水ダウ』クレバーな伊集院光VS山之内すずの「詐欺被害防止VTR」|日刊サイゾー

・『水曜日のダウンタウン』6/21 伊集院光山之内すず