道路と日テレに草が生える:先週みたテレビ(4月2日~8日)

道路に草が生える

 どうして草が生えるのだろうか。特にアスファルトの隙間なんかに。先週4日に放送されたEテレの新番組『又吉直樹のヘウレーカ!』は、そんな問いから始まった。

 『ヘウレーカ』は、3月までやっていた経済学を学ぶ『オイコノミア』の後続番組で、今度は自然科学を学ぶ趣向のプログラム。きっと又吉さんの目がテンになるような番組なのだと思う。

 

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 どうして舗装された道の隙間に、わざわざ草や花は生えているのか。専門の先生いわく、道端の隙間は植物が繁茂するところとはちがって日光を独り占めできる。抜かれても根が残りやすいため生存可能性も高い。場所によっては雨どいなどがあって水の定期的な補給ができたりもする。よって、アスファルトなどの隙間は植物にとっては居心地のよい環境である。

 

 なるほど、道路の隙間は草不可避。われわれはアスファルトに咲く花をみて涙の数だけ強くなれるよと感涙している場合ではなかった。

 

日テレに草が生える

 いつの間にか野性爆弾・くっきーが人気。いろいろな番組で白塗りの顔マネを披露し、先週は2つの番組で密着取材を受けているのをみた。ひとつは、2日放送の『人生が変わる1分間の深イイ話』。もうひとつは、4日放送の『1周回って知らない話』。どちらも日テレ。

 で、その2つの密着VTRのどちらも、謎に包まれた芸人の本当の姿を明らかに、みたいなスタンスでくっきーにカメラを向けていた。こんなふうにキテレツな言動ばかりしてますけど、ホントはお母さんのつくるきんぴらが好きで親孝行なくっきー、とか。不真面目なように見えますけど、ホントは後輩芸人に慕われているくっきー、とか。

 そして、最近の人気沸騰の背景には、本人のある心変わりがあった、と説明される。本人は「これ、深イイちゃいますか?」と少し茶化しを入れながら、次のように語る。

 

くっきー「若い頃は好きやと思うことしかできんかったんですよ。歳とってきたら周りがみれるようになったというか、我慢もせなあかん、やりたくないこともせなあかんっていう。やっと大人になれたんちゃいます?」*1

 

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 なんだか、同じ日テレのある番組での、10年くらい前の鳥居みゆきへのカメラの向け方を思い出す。そこでは、「本当の自分が出せなくて人生で損ばかりしている鳥居みゆきを『かわいい』女の子に変身させて素直な自分に」みたいな演出が施されていた*2

 

 冒頭の『ヘウレーカ』では、こんな話もあった。ときに雑草と呼ばれる植物が生息しやすい道路の隙間は、都市に自然の多様性をもたらしている。日本には北半球の代表的な植物が一通り根づいているが、都市ではその多くが、人の管理していない、道路の隙間のようなところで育っている。さらにそのような植物があるところには昆虫がおり、昆虫がいるところには鳥類などの動物も寄り付く。自然の豊かさを都市部に持ち込んでいるのは、人が計画し管理する緑ではなく、隙間で自生している、しばしば雑草と呼ばれる植物たちである。

 

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 そんな話を聞いた又吉は言う。植物は植木鉢に入っていたら「良いもの」として受け取られ、それ以外は「雑草」と呼んで邪魔なもの、無駄なものと思いがちだ。ぼくたちはカテゴリに頼って判断しがちな部分がある。それは芸人であり作家でもある自分に対する周囲のまなざしとも、似通っていたりする、と。

 

又吉「芸人のくせにとか、芸人なのか作家なのかっていう愚問を問われ続けてるんですけどボクは。この何年間か。ただの人間やのに、それがどっちかわかったときに、何の理解があるんだろうっていう。ないのにな何もって思ったりもするんですけど」*3

 

 テレビという植木鉢は、虚構に虚構を重ねるような芸人を、「ホントはマジメ」とか「ホントはスナオ」とか「ホントはキレイ」とか、そういうカテゴリに収めて隙間なく整序しがちなのかもしれない。そこに草は生えるのか。

 

 話はくっきーに戻って。 『深イイ話』の密着では、自宅とは別に借りている作業部屋で、カメラの前で新しい顔マネを開発するくっきーにもカメラを向けていた。年齢を重ねてやりたくないこともやらなければいけないことに気づいたくっきー。お母さんのきんぴらが好きなくっきー。「ホントはマジメ」なくっきーは、どんな新たな顔マネをみせるのか。

 

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 井上晴美です。90年代に活躍した元グラビアアイドルです。

 

 『ヘウレーカ』では、わずかな隙間でも育つ植物には、アスファルトの裂け目をじわじわと押し広げていく力があるのだとも説明されていた。なるほど隙間はあらゆるところに生じて草不可避。アスファルトに白塗りの井上晴美が咲いた2018年、新緑の候。