「指原はウソつきだ」と指原が言った:先週みたテレビ(6月20日~26日)
『諸事情により…』(6月26日)
指原莉乃「インタビューでウソつくんですよ、すぐ。雑誌とかのインタビューとか」 ノンスタ・井上「どういうウソをつくの?」 指原「全部ウソついてます。好きなタイプとか、雑誌によって全部ちがいます」/『諸事情により…』6/26
— 飲用 (@inyou_te) 2016年6月26日
「指原はウソつきだ」と指原が言った。先週26日の特番『諸事情により…』にて。
ホントに指原がウソつきならば、「ウソつきだ」という言葉はウソなので正直者ということになる。
指原が正直者ならば、「ウソつきだ」という言葉はホントなのでウソつきということになる。
正直者ならばウソつきであり、ウソつきならば正直者であり、正直者ならば…。
クレタ人のパラドクスよろしく、指原のパラドクス。
指原がウソつきなのか、正直ものなのか、問いは無限に連鎖する。答えは出ない。
しかし、そもそも答えが出る必要はないかもしれない。
必要なのは、答えが出ることではなく、出ないことなのかもしれない。
答えが出ずに、話題が途切れないことかもしれない。
無限に連鎖する指原のパラドクスのなかで、指原莉乃の話題は途切れない。
他方で、
悩める中堅芸人は「夢のない不幸よりも、夢のある不幸」を選ぶと言った。
先週24日の『ゴッドタン』にて(テレビ大阪の遅れ放送)。
売れない悩める中堅芸人は芸人を辞めようとは思わないのか。
そんな素朴な問いにブラックパイナーSOSの山野拓也は、
「いま辞めてもたぶん、いいとこ就職できないし不幸だと思うんですよ」と応えた。
「夢のない不幸よりも、夢のある不幸ね」と付け加えた*1。
滝沢の相方、西堀亮も次のように言い添える。
「知ってる不幸のほうが免疫があるので。未知なる不幸はツラいじゃないですか」*2。
なるほど、確かにそうかもしれない。
「夢」があるほうが耐えられるし、「既知」のもののほうが安心かもしれない。
だけど、「夢」は「未知」のはずだ。「未知」だからこそ「夢」のはずだ。
ということは、
「夢のある不幸」は「未知の不幸」であるがゆえに、ツラくて追えない不幸となる。
「夢のない不幸」は「既知の不幸」であるがゆえに、免疫があって追える不幸となる。
では、彼らの救いは「夢のある不幸よりも、夢のない不幸」なのか?
追っているのは、「夢のある不幸」なのか、「夢のない不幸」なのか。
悩める中堅芸人のパラドクス。この問いに答えはでない。なるほどこれは終わらない。
だけれども、必要なのは答えが出ることなのか。
25日の『マツコ会議SP』で、泡パーティーに集まる人たちにインタビューをしていたときのこと。
一般女性がマツコ・デラックスに次のように質問した。
「やりたくてやった仕事を嫌いになってしまいそうになったら、どうしたらいいと思いますか?」。
それにマツコは次のように応えた。
あのね、これ絶対みんなあるんだけど、諦めないでずっと続けてると、もう一歩先に行けんのよ。嫌だ嫌だって思っててもいいから、我慢して続けてると、その先に行けるの。それで我慢できない人は、その先に行けずに終わっちゃうの。だからいっぺんは我慢したほうがいいよ。何度も何度もこれは違うって思ったら辞めてもいいけど。あぁなんか違う、って思っても絶対続けたほうがいい。
リアリストなマツコは、続けていればきっと報われる、とは言わない。
続けていれば「一歩先に行ける」と言う。「その先に行ける」と言う。
続けていても、誰もが認める成功や正解には到達しないかもしれない。
行き着いた先に、答えはないかもしれない。
けれども、続けることで「一歩先」には行ける。
なにが夢なのか幸福なのか見通せないなかで、それは脆いけれどささやかな希望。
さて、続けること、ということで、
桂歌丸が勇退し、春風亭昇太に司会が替わってはや1ヶ月経った『笑点』で、
ここ最近、密かに続けられていることがある。
それは大喜利の冒頭のあいさつに潜んでいる。
昇太さんがいまボクのこと、サンと呼ぶかクンと呼ぶか迷ってるってね。じゃああの、思い切って、山田先生でお願いします。バンザーイ! 山田隆夫でーす!
あ、あのー、山田くんで大丈夫ですよ。できれば、山田先生でお願いします。バンザーイ! 山田隆夫でーす!
アユ釣りのシーズンです。皆さん、アユ釣りの準備はできてますか? アーユーレディ? ハハハハハ、バンザーイ! 山田隆夫でーす!
♪先生、先生、山田先生~。バンザーイ! 山田隆夫でーす!
みなさーん、もうすぐオリンピックですね。日本選手を応援するときは、お茶を飲みましょう。ニッポンチャチャチャ。バンザーイ! 山田隆夫でーす!
座布団運びの山田はここ数週間バンザイし続けている*3。
その「一歩先」には、何があるのか。
答えはないかもしれないが、見届けたい。諦めずに、続けたい。
*1:『ゴッドタン』TVO(2016年6月24日)
*2:『ゴッドタン』TVO(2016年6月24日)
*3:駄洒落を言った後にバンザーイ!と叫ぶあいさつの型(駄洒落バンザーイ型)は、以前からある「山田隆夫のあいさつ」のパターンのひとつなので、山田のバンザイ自体は特別ではない。けれど、ずうとるび回顧型、ケイコちゃんノロケ型、よい子のみんなに山田からの忠告型、山田とその一座型、オリジナルテーマソング型、とっちゃん坊や型、流行遅延型、など、さまざまなあいさつの型を繰り出す山田である。最近のあいさつは偏重していると言わざるを得ない。『笑点』50周年を祝っているのかもしれないが、駄洒落もなしにバンザーイ!を叫ぶなど、自らがこれまで確立してきた型からの逸脱もみられるし、その祝福の姿勢がどこまでテレビのこちら側に伝わっているかというと、疑問が残る。